想い出提供株式会社

長くこの趣味をやっていると定期的に次のような話題がでるものだ。ボードゲームの普及について、初心者とマニアについて、勝利を目指さないプレイヤーについて、キングメーカーについてなど。
結局のところ個々人の問題に帰結する(だって趣味なんだもん)のに定期的に出てくるということはけっこう普段からいろいろ考えるところがある人がいるのだろう。それ自体はよいことだと思う。
そこで私も普及っぽいことを書いてみたいと思います。

私自身が『世界のボードゲームを広める会ゆうもあ』(以下ゆうもあ)といういわゆる「ボードゲーム普及団体」に所属しているため、よく不思議がられることがひとつある。
http://www.u-more.com/index.shtml

それは私が自分の子どもたちにボードゲームを教えたことが全くと言っていいほどないことだ。私の考えは「趣味というものは人に教えられてやるものではなく自分で見つけるものだ」ということ。少々無理をしてでもしなくてはいけない勉強や学習の類とは一線を画すものです。これから生きていくうえで必要なことは申し訳ないけど無理にでも学ばせなくてはならない、人は独りでは生きられぬ。一方、趣味については特段これがないと生活できないわけではないので、それこそ自分で捜し自分で進んでやることで充分だと思います。現に彼らは彼らなりの趣味を見つけだしているそれで充分なのである。

ゆうもあの活動に関するインタビューなんかで「活動が大変ではないですか?」と聞かれることがある。私は「自分が楽しくやっているからそう苦にならない。むしろ私が楽しく遊んでいることを見せることが大切。」というふうにいつも答えている。もちろん実際にそのように考えてもいる。本当に大変だったらボランティアに近いNPO団体活動なんて一時はできてもここまで長くは続けられないです。「では楽しいこととは何ですか?」これに対する返答はいつも困る。「楽しいから楽しい」としか言えない。人間の好悪など主として情動に左右されるような事柄に「合理的な理由」があろうはずがない。

普及活動といっても私の場合特に難度の高いものをしているわけではなく、上述のように自分が楽しくて、かつTTBと遊ぶと楽しいな。または同卓でなくとも隣のTTB卓は面白そうだな。こういうふうにその場その場で映っていればそれで小難しいことは論じなくとも「広義の普及」には繋がっている。そう信じている。
普及に関する論考は冒頭述べたように定期的に出てくる。そういうのにふれるたびみんなよく考えていると思う。正直敬服する。私にはできないことだしな。自分にできないことをできる人は全員尊敬に値する。まさに「我以外皆我師」である。

私自身、自分ひとりでできることは多寡が知れていることはわかっている。ゆうもあゲーム会などにくる子どもたちに教えたり面白いところを見せたところですぐにボードゲームの認知度が劇的に上がるはずはない。彼らがすぐボードゲーム買出すわけでもない。ひょっとするとメジャーな趣味になるのには直接つながらないかもしれない。そんな不安も包含しつつ未だに続けているのは以下の理由がある。
「これまで知ってるボードゲーム」といってゆうもあに来る人が例として挙げるのは人生ゲームであったり野球盤であったり将棋であったりオセロであったりモノポリーであったり。カードゲームだったらトランプゲームであったりUNOであったり遊戯王であったり。それが現実だ。

だから、そのうちのひとつにしたい。

ここで例に挙がったものを彼らの多くは頻繁に遊んでいるわけではない。厳密にいえば遊んでいる人もいるのだろうが、これだけほかにも娯楽があってことゲームに関してだけでもたくさんのジャンルがある中では、そういった人はごく少数といっていいでしょう。では彼らに例に挙げられるようなことをしたらどうなるのか。拒否反応がなくなるのである。他に何もないならともかく得体の知れないものにわざわざ手を出す人はいないものだ。自分だけでなく自分の周囲をプレイヤーとして巻き込んでしまうボードゲームならなおさらです。

ここで彼らが「内容も忘れてしまったが、かつてそんなようなことをやった覚えがある。」レベルになってくれていれば、何十年先であっても再度出会ったときの敷居がかなり下がる。それは彼ら自身が子どもをもつ時かもしれない、甥姪に接した時かもしれない、下手をすると孫ができたときかもしれない。そのときに「おぼろげながら楽しかったような気がする」でよい。
「小さい頃、オセロやりました。七並べやりました。人生ゲームやりました。」そんな感覚と同等でなんとなく覚えててくれれば充分なのだ。すんなりこの趣味に入れる。これ意外に大切なことだと思います。

そんなおぼろげな想い出づくりに私は参加している。おそらく私の生きている間にその具体的効果をみることはないだろう。まあ、それはそれでけっこう楽しいことなんだがね。